弱点克服から強みの伸長へ

私自身は、趣味でテニスを続けているのですが、
日本ではこれまで、ジュニア育成において「弱点・欠点・苦手を克服する」という考え方が重視されてきたとのことでした。
練習メニューも、苦手なショットを何度も繰り返して克服することが中心だったとか。
しかし、最近では「得意なことをさらに伸ばす」「自分の特性を知って強みに活かす」
ことが大切だと考えられるようになってきている
そうです。
自分のプレースタイルや目指すべき目標を考えるためにも、
まず「自分を知る」ことからスタートするのだそうです。

保育現場における運動会の取り組みと子どもが受け取るメッセージ

保育園では毎年、夏のプールが終わると、一気に運動会に向けての準備に入りますね。
1年の前半期の成長を確かめる場とはいえ、
特に年長児を担当している先生は、さらにギアアップして取り組みを進めておられるのではないでしょうか。
棒のぼりや鉄棒、跳び箱に竹馬・・・
この年齢ではこれができないと!と発達課題を求めて日々子どもたちと過ごしながら
プレッシャーを感じている先生も多いと思います。
子どもの姿が担任である自分の力量だと感じると、プレッシャーも大きくなりますよね。

ですが、跳び箱に挑戦している子ども自身が一番、「跳べるようになりたい!」「跳んでるところを見てほしい!」
と強く願っています。
友だちが次々跳べるようになっているのに自分はなかなか跳べるようにならない…
「そんな自分はダメなんだ」
というメッセージをその子が受け取ってしまわないように、大人は心を配りたいものです。

否定的な言葉の影響と子どもの成長

テニスの練習においても、苦手なことを克服することをテーマにしたメニューでは
「ダメ!もう1回!」や「この〇〇の動きがダメなんだ」といった、
できないことにフォーカスした否定的な言葉が多くなります
これにより、「できない自分はダメ」というメッセージが子どもに何度もくり返し刷り込まれていくことになります。
これはツラいし、しんどいですね。
こういった経験があると、他の場面にも影響するようになっていきます。
「自分はダメなんだ」と感じ、自信が持てなくなるのですね。

何かができないからといって、その子がダメだというわけではありません。
何かが欠けている・足りないわけでもないのです。
そのままで、その子の存在は○丸なんです。
何ができても、何ができなくてもその子の価値は変わりません
存在自体を大人に丸ごと認めてもらいながら、
そこにプラスして
「何度もチャレンジしたらとび箱が跳べるようになった!」「やった!」「うれしい!」と
子ども自身が感じてほしいなぁと思います。

このような経験は、「これもできるようになりたい!」という次への意欲に繋がり、
自分への大きな後押しに
なります。
そうやってどんどん自分を大きくして成長していってほしいですね。

大人はそれを支えたり導いたりする存在です。
何よりも子ども自身が「~したい!」と感じてやることが一番大切です。
「やらされてる」ではなく、「自分がダメだから」でもなく、
「やりたい!」「できるようになりたい!」と本人が願うから、成長するんですね。

子どもの興味を引き出すために

人間の記憶に残る4つのポイントがあります。
1 恐怖  2 食欲  3 性欲  4 興味  
です。
人が自ら行動するポイントとも私は考えられると思います。

「食べ物はどこにあるか」、「素敵なパートナーはどこにいるか」は
生存にかかわってくる問題でもありますから、自分から積極的に行動しますね。
「恐怖」を感じたときも、生存にかかわっていますので、
積極的に自ら逃げるとか、その場にとどまるといった選択をするでしょう。
あるいは生存のために「カギになっている人の指示に従う」という場合もあるかもしれません。

もし、大人が「学校の勉強や将来役に立つ知識を記憶してほしい」と望むなら、
子どもが自分から「~したい!」と思えるように、
子どもの興味をうまく刺激して、その力を引き出すことが必要です。
恐怖を感じさせたり、食べ物を見せたりするのではなくね。
怒られながら勉強しても、勉強した内容は残らず「怒られて怖かった」記憶だけが残るのです。

逆に、自ら興味を持って取り組んだことは、強く記憶に残ります
「あのときの運動会で自分はやった!」という記憶は、そのときの感情とともに子どもの自信となり、
その後の自分の大きな支えとなります。

ひとつの大きな行事である運動会も、そんな場面がたくさんある取り組みにしたいですね。