◎離乳食を進めていく時期がのちにどんな影響を与えるか
離乳食は、準備期にスプーンから食べ物を取り込むことや
口を閉じて飲み込むことを覚えたり、
母乳やミルク以外の味があることを覚えたりし、
前期・中期・後期・・・と進むにしたがって
食べられる食材の種類が増えたり、
煮たものや炒め煮、焼いたものなど調理形態の幅が広がっていきます。
保育園では産休明けから就学前までの保育をしていましたので、
子どもたちの成長をずっと継続して見守ることができます。
そうやって大きくなった子どもたちのいろんな場面での姿を見て
「赤ちゃんの時はどうだったっけな?」とふと振り返ったとき、
離乳食の時代にどんな進め方をしたか
食の経験がどうだったか、ということが
その子のその後の成長に大きく影響しているなあということを感じます。
◎「食べる」ことは「生きる」こと
これは、たくさんの子どもたちの成長を見てきての
私個人の感覚と考えです。
子どもにとって離乳食というのは、初めての経験の連続です。
しかも口から直接体に摂り入れるという行為であり、
それは生命にかかわる重要なことで、
どんな動物も行う本能的なことでもあります。
だからこそ、子どもも本能的に
苦いと感じるものは、「危険」と判別して(青野菜など)べぇ~と吐き出しますし、
甘いものは好んで口にします。
(甘いものを多く口にしていると他の味が受け入れにくくなっていきますので要注意!)
「初めて口にするもの」に出会い
「くり返し経験を重ねる」
この離乳食の時期をどんなふうに過ごすかは、とても大事です。
大きくなっても、大人になってからも、
人生で「初めて出会うこと」は何度もあります。
いろんな人にも出会います。
「こんなコトってある?!」とか
「こんな人ゴメンだわ!」
「信じられない!」
と感じる出来事や物、人にもたくさん出会うでしょう。
そんなときどうするか。
「こんなことってあるんだね」
「世の中にこんな人もいるんだ」
「私はイヤに変わりはないけど起こったことは仕方がない」
と受け止めるのか、
受け止められず拒否して、
日常生活がイヤな気持ちや怒りでいっぱいになったり
こころが閉じていったりして
「もうどうしようもない」状態になるのか。
こういった対応、反応が
離乳食の時期の初めての食材や
初めての調理形態に出会った時の経験と
リンクしていると思うのです。
くり返し経験することで
受け入れられるようになっていく過程も
食の経験と人生は、リンクしていることが多いように思います。
◎楽しく食べる経験や食の幅を広げることが大切な理由
ですので、
離乳食の時期にできるだけたくさんの食材に出会い、
(もちろん消化できるかといった体の成長具合に適した時期に適した食材)
たくさんの調理形態を経験し、
くり返しその経験を積み重ねて「食の幅を広げる」ということは
その子の「受け入れ幅を広げる」ことにつながり、
「人間の幅を広げる」ことにつながります。
たとえべぇ~と舌で押し出してきても
その食材に出会った経験は貴重です。
たとえ焼いた調理方法が好きでなくても
くり返し食卓にのぼった経験は貴重です。
そして、イヤなものでもくり返しくり返し経験するうちに
受け入れられるようになっていくのは、
「これおいしいよ。食べてごらん」
「おかあさんも(先生も)コレ食べてみよ。あ、おいしぃ~」
「今日はコレ食べれたねぇ」
と自分を受け止めてくれる大人が
一緒に同じごはんを食べているという安心感と楽しい雰囲気があるからですね。
無理やり食べさせられると、その経験がマイナスに残ることがあります。
「食べる」というのはあくまでも「楽しく」が前提です。
手がかかるからと子どもだけ先に食べさせて、大人が一緒に食べないというのも、楽しい経験とは言えませんね。
くり返し食卓にのぼったけれど
子どもの時にはどうしても食べれなかったものが
大人になると食べれるようになった、ということがあります。
大人になっても相変わらず嫌いなものは変わらない
ということもありますが
幼い頃何度もくり返し作ってもらった経験や
大人と一緒に食べた安心感、楽しかった経験は
必ずその人の中にいきています。
健やかな成長には
「適した時期に適した経験をする」
ということが必要です。
子どもたちには、
0歳の離乳食をすすめていく時期に
食の幅が広がる豊かな経験をしてほしいなあと願っています。