◎あるテレビ番組から知ったこと

先日何年か前の番組の再放送を見ました。
NHKアーカイブス「この子らを世の光に~ともに生きる社会をめざして~」
です。

『今年7月、神奈川県相模原市で障害者の施設に男が侵入し19人を刺殺した事件、
「障害者は生きていても仕方ない」という容疑者の発言が大きな波紋を呼んだ。
いま見直されている言葉がある。「この子らを世の光に」。障害者福祉の父、糸賀一雄の言葉。
障害者一人一人が光り輝く存在だということを訴え続けた彼の人生を描いた番組から、
障害者と健常者がともに生きる社会は実現できるのか、その大切さを事件から3か月改めて考える。』
(”NHKドキュメンタリー”サイト本文より)

という番組の中で、
糸賀一雄氏が、戦後の混乱の中で池田太郎、田村一二の要請を受け、
戦災孤児の世話をするとともに、重度の障害児の教育を行う”近江学園”を創設し、
園長をされていたことを知りました。

”近江学園”は知っていました。有名でした。
学生時代に3週間泊まり込みで実習をした施設が近江学園の近くで、
その際、見学させて頂いたこともありました。

「あ~~知ってる。懐かしい」と思いながら見ていましたが、
糸賀一雄さんという方が近江学園を創設され、園長をされていたことは知りませんでした。
(というより学生時代に聞いていてもしっかり認識できていなかったのかも)

実習先の施設も彼が創設されたものだったと知って
あらためて驚き!(そうだったのか…)
[実習先は重度の心身障害のある子の児童福祉施設。
重度なので児童施設とはいえ18歳過ぎても行き先のない人は継続して
その施設で生活していましたので30歳過ぎの方もいました]

番組では、施設で生活する子たちや世話をする大人たちの実際の様子も映し出されていましたし、
18歳になってからの就職先、行き先がなく、
社会からはなかなか理解されない実態も映し出されていました。

子どもたちの様子を紹介するなかで
あらためて心に残ったことがありました。

◎攻撃的なところが多かった少年が落ち着いた理由

=======
Aくんは話せず、ひとをたたいたりいきなりなぐりかかったり、
攻撃的なところが多く、ひとと上手く関係が作れない少年だった。
けれど、Aくんが変わる大きなきっかけがあった。
それは「粘土」だった。14歳の頃粘土に出会って、Aくんは夢中になった。
粘土は柔らかく、思いのままに形が変わる。
粘土でさまざまな作品を生み出すうちに、Aくんはどんどん落ち着いていった・・・
=======

30代になったAさんは今も粘土と関わっており、
粘土を口に入れてしばらくモグモグと噛んでから口から出して
ピッと作品の一部に貼り付けながら作成していました。

ひとつの作品として何かを表現することや、その過程で
人は自分の内面を消化しているのでしょうね。
中にあるものを外に出すスッキリさ。
出す作業。
Aさんは粘土を通して。

・・・そういえば実習先でも、噛んだり髪の毛を引っ張ったり
いきなりつかみかかってくることがあるから気を付けてください、と言われた記憶があります。
実際、そのような経験もしました。
そして、施設にはみんなが作った粘土の作品がたくさんありました。
「好きなの選んでいいよ」と言っていただき、
担当していた人の気になる作品をいただいたこともありました。
震災で壊れてしまいましたが。

「おっと!」という彼らの行動が、彼らのモヤモヤ・イライラ故だったのかも
とか、
粘土に限らなくても、内面を表現できたり消化できる何かに彼らが出会っているかな、
とか
この人にとってはそれは何だろう
といった見方は学生時代にはできませんでした。

番組を見てあらためて
「こういうこと大事だよな」
と感じたことでしたよ。

私たちにとっても
「これ好きだな」ということは
スッキリしたり、心を穏やかにしてくれますね。

◎すべての子どもたちに経験してほしいこと

上記のAさんは粘土を触って作品にしていくことがしっくりきたようですが、
何がしっくりくるかはその子その人によって違うのでしょう。
ですが、「粘土は柔らかく、思いのままに形が変わる」というのは
とても大事な要素です。

「水」もまたしかり
水道の蛇口から流れる水、そこに指を突っ込んだらピシッと飛び散るしぶき、
カップや洗面器に入れたとき、プールにザブン!と飛び込んだとき…
水もそのときによって自由にその姿を変えます

こういった、働きかければ形を変える素材、そこに子どもが主体的に関わっていく活動
赤ちゃんの頃から保障したいものです。
保育園では、砂・どろんこ(これもおススメ!)、小麦粉ねんど、片栗粉スライム、指絵の具、寒天… etc.

感触を嫌がる場合もありますが、
その子の様子を見ながらくり返し機会をつくっていくと、段々とその素材に触れられるようになっていきます。
(だから生まれてからできるだけ早い時期から触れる機会をつくってほしい)
「嫌がるからこの感触はやめておこう」と一度でストップしてしまうのはもったいない。
様子を見ながら適切なはたらきかけをする」のはプロの腕になってきますが、
必要以上に大人がこわがらないように心がけたいですね。
「いろいろな感触を受け入れる」ことは「いろいろな食材に触れ受け入れて食べる」ことにもつながりますし、
それは「いろいろな出来事・経験を受け入れる」ことにつながり、つまりは「人としての幅」になっていきます

「水」はどの子にも受け入れやすい素材です。
元はどの子も羊水の中にいたんだし。
夏はこころも身体も解放できる水遊びを楽しむチャンス!大人も一緒にみんなで経験してほしいです。

☆” あなたの好きなことは何ですか?