◎発達の順番を間違えない先を急がない

発達にはみちすじがあります。
いろんなちからを獲得するには順番がありまして、
ひとつのちからが土台になって次のちからがつく」のですね。

積み木をひとつずつ積んでいくようなイメージですので、
早く早くと先を急ぎますと、
土台が小さく高さばかりが積み重なっていきますので、
後で崩れやすいです。

順番を間違えて、
まだ後のものを先に積んだりしてもひずみが起きます。
(ハイハイしてないのに先に立たそうとするとか)

ひとつのちからを横にも広げてしっかりした土台にしますと、
安定して次のちからが積み上がります。

そうやって、ひとつひとつのちからを横にも太らせながら、
上へも積み重ねていくと、
人としてのちからが確かなものになっていきます。

ある園長先生がおっしゃっていた
いつでも どこでも 誰とでもできるちからが本物だ」
という言葉がとても印象深く私の心に残っています。

◎子どもの発達と描く絵の関係

さて、
子どもの描く絵にも発達のみちすじがありまして、
つかまり立ちができる頃、
トントンと打ちつけるような点てんから始まって、ま~~る○が描けるようになって・・・
と体と認識の成長とともに
順番を追って絵も成長していきます。

紙いっぱいに○を描きながら
「これおかあさんでな、ほんでこれおとうさんでな・・」と楽しそうにおしゃべりし、
○のなかに目らしき点々があらわれ、口を描き・・と成長が進んで、

○から直接手足の線を描き始める頃には、
子どもたちはお話を聞いてもらいながら描くのが
大好きになっています。

なのですが、
4~5歳頃から、紙を目の前にしても描けなかったり、
描きたがらなかったりする子が出てきます

おしゃべりしながら絵を描くのが楽しい♪という子と、
何描いていいかわからない・描けないという子の差が目立ってくるのです。

どうしてなのでしょうか?

◎子どもが絵をのびのびと描けなくなる理由

子どもたちの絵は「生活そのもの」です。
・家族で○○へ行って楽しかった、
・友だちとみんなで運動会でこんなんして嬉しかった、
・ザリガニに手をはさまれた・・・ などなど
毎日の生活でこころが動いたこと・体験したことを
そのままおしゃべりしながら楽しそうに描きます。

ですから、ゲームやDVD・テレビなど
受け身なことが多くなっていると、絵が描けなくなります

そして、機械音や映像は子どもにとって強烈な刺激ですので、
それが絶え間なく入ってくる生活になると、
さまざまな感覚が麻痺していって、
体験にこころが動くのが鈍くなります。

あるいは、早くからひらがなやローマ字など、字を教えられたり、
三角△や四角□など形を描くことを教えられた子たちは、
その形にこだわって、いきいきとした絵を描かなくなります

自分の中からあふれてくるものを
こころのままに表現するより、
形を描くことにとらわれてしまう
のです。

保育園で仕事をしているとき、
絵が描けなくなってきた子たちについて、
家庭での話をあわせ考えると、
大体上記のようなことが当てはまりました。

けれど、中には
「字も家で教えてないらしい。形も特に教えたわけではないらしい。
家族でもキャンプや海へ行ったり外でいろんな経験もしているし、保育園でも友だちと楽しそう」
「・・・じゃあなんで?」ということがありました。

そのときはわからなかったのですが、
心理学を学ぶうちに思い返すと、
「○○でなければいけない」という思考スタイルが、親や身近な大人の中にあって、
その子がその考えに触れる機会が多い環境にいるとき、
どんどん絵が描けなくなってくるんじゃないかということに気付きました。

「こうするのはいけない。こっちが正しい」とか
「こうするのはいい子、そんなんするのは悪い子」とか
「これができるのが当たり前。できないなんて・・・」
といったことを
常々親や身近な大人から言われ続けていると、
「こうじゃないといけない」
「そうでない自分はダメだ」
ということがどんどん刷り込まれていく
のですよね。

これはしんどい。ツラい。

あるがままの自分が表現できなくなるし、
「失敗したらダメ」と感じるようになる。
絵が描けないのは当然です。

「こうじゃないといけない」というのは、恐怖です。
それ以外が許されないのですから。

「そんな自分はダメだ」と感じていると、
友だちのことも「そんなキミはダメだ」と感じるので、
指摘が多くなったり、バカにするような態度も出てきたりします。
そうなると、友だち関係にもひずみが出てきます

幼い頃の刷り込みは潜在意識に刻み込まれ、
大人になってからも影響を及ぼします。

良いか悪いか、できるかできないか、白か黒か・・・
のどちらかしかないわけではなく、
その間もたくさんあります。

「こんな自分でもいい」「このままの自分でいい」
と感じることができるのは、
無条件に自分という存在を受け入れてもらってこそですね。
くり返しくりかえし。

「自分はこれでいい」と感じられると、
ひとのことも「あなたもそれでいい」と受け入れられるようになります。

子ども時代に、「このままの自分でいい」と刷り込まれていないと
もしあなたが感じたとしたら、
今からでも
「そのままでいいんだよ」「よくやってるよ」「大好き」
といっぱい言ってもらいましょう。

パートナーや友だちに「言って」って頼んだらいいです。
難しいならカウンセラーに。

こころがふわっとまあるくなって
人間関係が穏やかになっていきますよ。